ツイッターやらで話題になっていることが増えてきたAIでのイラスト生成サービスに関して、著作権関係にちょっと詳しい方にコメントを聞きましたので、それを参考にして会話形式でまとめてみました。
騒がしい感じですが、不安になっている方とかに参考になると嬉しいです。
時間のない人へ:この記事の内容のまとめ
・基本的に画像を集めてAIに学習をさせるのに作家さんの許諾は不要。
・AI学習禁止を義務付けることは難しい。AI学習への無断取り込みご遠慮くださいっていうお願いレベルが限界。
・AI画像生成の結果を売っていいかどうか、その著作権の扱いは微妙
AIに他人が描いた絵を学習させるのって合法なの?

AIに他人が描いた絵って学習させてもいいクマ?

AIで著作物を利用することに関しては、著作権法の改正が議論されて、30条の4という、とても自由な権利制限規定ができました。2019年1月1日に施行されています。なので、AIにも色々ありますが、この30条の4が適用されるようなAIであれば、他人が書いた絵を学習させても、著作権を侵害することにはなりません

つまり、、どういうことだクマ
基本的に画像を集めてAIに学習をさせるのに作家さんの許諾は不要。

この著作権法30条の4の、なかでも関連するのはその第2号なんですが、これが要するにどういうものかというと、情報解析のためであれば他人の著作物をどのように利用することも原則として自由だ、というものなんですね。画像を集めてAIに学習させるときも、その画像の作者さんの許可を取らなくてもいいことになっています。ただし、AIにもいろんなAIがあるので、全部のAIが30条の4が適用されて自由に学習できるかと、そうではないですね

むずいクマ。どういうことが自由なんだクマ

例えば、ある漫画家さんの画風を解析するために、その漫画家さんの作品を沢山スキャンしてコンピュータに入力すると。こういうことは原則として自由にできます

…特に描いた人から許可をもらわなくてもいい?

そういうことになります
AI学習を禁止にしたいんだけどできるの?

許諾をもらうことなないってことは、クマの描いた絵も誰かのAI学習に使われるってことクマ? AI学習を禁止にしたいクマ!

それは難しいところですね。AI学習禁止といったものを注意書きに入れても、それはその注意書きを守る義務がある人にしか効果がありません

クマにはむずいクマ!

駐車場に”無断駐車は三万円の罰金!”って書いてあることがありますけど、あれは結構微妙なんですね。見たから払え、とは必ずしもいえないですし、そもそも見ていない人もいるでしょうし。あとは、著作権法に自由ですよって書いてあることを、著作権者が禁止していいのかという問題もあって、実はけっこう難しいですね
AI学習禁止を義務付けることは難しい。AI学習への無断取り込みご遠慮くださいっていうお願いレベルが限界。
AIに学習された自分の絵っぽいものって勝手に売られたりしちゃうの?

と、なるとじゃあ学習されてAIから自分の描いたっぽいイラストがたくさん作られて勝手に売られちゃったりするクマ?

それは、将来的にはおそらくそういう時代が来るかもしれませんが、でも、「っぽい」のレベルによるでしょうね。画風が同じだけの「っぽい」なら止められませんが、表現まで同じ「っぽい」なら別です。つまり、AIが作った同じ”画風”のイラストが勝手に売られることは止められませんが、AIが”画風”だけじゃなくて”表現”まで類似するイラストを作るとしたら、その生成と販売は止められるかもしれません

難しすぎるクマ…

例えば、マンガ家のA先生の漫画を沢山収集して学習用データセットを作って、学習済モデルを作り、その学習済モデルに何か指示をして、A先生風の画像を作らせたとします。
そのAIが目論見通りにできあがっていれば、AIが生成した画像は、あくまでもA先生”風”の画像です。そこにはもう、学習させたA先生の漫画の表現は残っていないので、A先生の著作権はAIが生成した画像には及びません。
著作権は、表現に及ぶものであり、画風やアイデアには及ばないんですね。
なので、AIが生成した画像にA先生の画風やアイデアが残っていても、それにA先生の著作権は及びません。
でも、AIの精度が悪かったり、学習の量が少なかったりして、AIが生成した画像に、学習させたA先生の漫画の創作的表現が残っている場合、A先生の著作権は、AIが生成した画像にまで及びます。
創作的表現が残っているか否かは最後は裁判官が判断しますので、一般論としてはまさに「微妙」というしかありませんが。

めっちゃ微妙クマ…
売っていいかどうか、はものすごく微妙。
最後に
話題のAIによる画像生成。すごいですよね。SFの世界です。
絵を描く人からしたら不安にもなるよなぁ、というのがどんぐりの感想なのですが、法的にどうなるかというとAIが生成した画像の著作権はどこに行くのか?が曖昧なようですね。
学習元画像を作成者に使用料みたいな話も出ていますけれど、権利があるとまで言い切れるかなんともいえない。そもそもですけれど著作権ってかなり強いので、その認める範囲っていうのは何もかもにあるわけではないです。
いわゆる作風、というところ(印象派とかって言い換えてもいいかもしれないですが)まで範囲に含めると、印象派の絵をかけるのはAさんだけ、となるから基本的にはそこまで範囲に含めるものではないですし。
リーガル的に話すとこのようなところになりますが
では、無断でのAI学習を禁止にすべき!とするというのも、こういった仕事をしている立場から考えればあまり良いものとは思えないです。技術が出てきてしまった時点で時代は進むものかな、と。
この著作権法の改正は日本でのAI開発をしやすくしようという観点があります。
日本でこの学習を禁止としたところで海外から出てくるでしょうし、学習の禁止はもはや現実的ではないのだと思います。。
もう一つは学習をさせること自体が問題になるのではなく、その結果、勝手に商売されると困るわぁ、というところで、技術が脅威なのではなくて「使う人」の問題だと認識すべきかなと思います。
もうひとつ、観点として持たないといけないかなと思うのは、
インターネット上に公開した時点で多かれ少なかれ、すでに学習自体はされてしまっている、とは思います。
検索エンジンが拾い上げる画像を収集するツールはありますし、使うのが難しいものでもないです。
それにAIが学習しているのはなにもイラストを生成するためだけでもないです。googleの検索エンジンにしろ、ツイッターのおすすめの表示にしろ、データを解析して学習しモデルを生成はしています。
よりあなたが好む内容を、あなたがほしくなる広告を、あなたがいいねしたくなるつぶやきを、表示したほうがみんな使ってくれますからね。関連表示やなんかにAI学習って使われていたりします。
それに画像検索をすると類似画像がでますよね。これも何らかの形で学習はされている結果です。すでに私達はAIの恩恵を受けているんですよ。
便利になる技術であることは間違いないです。
今、起きているのは作家性の問われるようなものにもAIが進出しましたので、
AIが生成した作品の権利についての問題提起が起きている、というところじゃないかと思います。
ちなみにですが、AI画像生成エンジンやサービスによって生成結果の著作権の扱いは微妙に異なります。利用時に利用規約に同意するものと思います。
サービスやエンジンを使用する際には生成結果の著作権の扱いをよく確認するようにしましょう。
特に商用での素材利用の場合には注意が必要かと思います。